モンタルチーノ、モンテプルチャーノ 、モンテ・・・? (ワイン、井上)

似たような名前の多いイタリアワイン。次に挙げるイタリアワイン5種を正確に区別できますでしょうか?
1. Brunello de Montalcino
2. Rosso di Montalcino
3. Vino Nobile di Montepulciano
4. Rosso di Montepulciano
5. Montepulciano d'Abruzzo

勿論資格試験ではないので、それなりにthrough していただいていいのですが、店主も若い時代にはよくわからないことがありました。
イタリアのワイン生産者・関係者や日本でもイタリアワインを専門にしているプロや愛好家にとって、この区別は何でもない常識です。一方、「こんな舌を噛みそうな似ている名前があるのでイタリアワインは難しい」との意見がイノワインに寄せられるのも心底わかります。ご心配なく。イタリア人でもこれらを区別できない方は大勢いますし、そもそも知識がなくても美味しく楽しめればよいのですから。しかしここはイタリアに強いイノワイン。皆様のショッピングの参考に簡単ながらもクリアに区別する指針をお教えいたしましょう。

まずは各ワインを簡単に整理しておきましょう。
1. トスカーナのモンタルチーノ地区の限定地域で生産されたサンジョベーゼグロッソ種(地元でブルネッロと呼ばれる)100%で、決められた生産方法・期間により作られるイタリアを代表する銘酒(DOCG)。
2. 同じくモンタルチーノ地区のサンジョベーゼグロッソ種100%で作られるが、1より法定基準が緩やかな1 のセカンド的ワイン(DOC)。
3. トスカーナのモンテプルチャーノ地区の限定地域で生産されたサンジョベーゼグロッソ種(地元でプルニョーロ・ジェンティーレと呼ばれる)を主体とし、決められた生産方法・期間により作られる高貴(nobile)と言われる銘酒(DOCG)。
4. 同じくモンテプルチャーノ地区のサンジョベーゼグロッソ種を主体に作られるが、3より法定基準が緩やかなワイン(DOC)。
5. アブルッツォ州でモンテプルチャーノ種(トスカーナの地名でないことに注意)から一定基準を満たして作られる幅広い品質のワイン(DOC)。

お解りのように、1~4までがサンジョベーゼのワインで5のみがモンテプルチャーノ種のワインです。他のイタリアワインも同様ですが、それぞれの名称フラグメントが品種、土地、タイプ、呼称等のどれを示しているかを掴むことが第一歩です。

補足しておきますと、1は正式名を完全に言わずとも「ブルネッロ」と言えば十分通じます。2は「ロッソ」とだけ言っても2としてイタリアワインの世界では通用します。それは1が偉大とも言えます。3はモンタルチーノの形式ならばプルニョーロ・ディ・モンテプルチャーノとも言えるワインです。このワインはもちろん銘酒ですが、ブルネッロの陰に隠れるのは納得しません。4を「ロッソ」のみで呼称することは2ほど一般的ではありません。2は1の早飲みタイプで、やや1よりライトですが、生産者によっては1と2の差が大きいワインと僅差のワインがあり、僅差ならば「ロッソ」はお得感があります。4は二つのタイプに分かれます。一つは伝統的樽熟成の3のセカンド的ワインで、他方はステンレスやセメントのタンクで熟成した、3と異なる主張を持ったワインです。現在、後者のフルーティなタイプは増えていますので、4を買う際にはタイプを確認すると良いでしょう。5はDOCワインですが、テラーモ県限定のColline Teramaneを関したDOCG規格のワインもあります。5は安価なものから高価なものまで、ライトなものからヘビーなものまで、幅の広さではイタリアでも1,2位を争うワインです。

そして、大事なことはワインの名称に関する知識があれば買ったり飲んだりするときの参考になりますが、なくてもかまいません。そして、得られた知識は飲むことによって自分自身に染み込んでいきます。これは楽しい勉強ですね。このコメントが皆様への参考になればと思います。

イノワイン店主 井上直巳
未成年者(20歳未満)の飲酒は法律で禁じられています。