官能でつかめ(ワイン、井上)

 先日の大阪G20でのランチやディナーでは、日本の食材を使った料理に日本ワインや日本酒がサービスされたようです(詳しくは外務省ホームページ)。日本酒(Sake)がヨーロッパの日本料理店以外に、その国の料理に合わせてサービスされる機会が増えているようす。ヴィネガーと喧嘩してしまうフランスの白ワインの代わりにSakeをサラダに合わせたり、クリーム系のソースの料理にSakeの旨味を合わせたり等々。対して日本では、世界各国のワインが飲めますので、和食にワインも珍しくありません。

 酒類の特質(アルコール、糖度、酸、旨味、苦み)のデータを分析すれば、古典的な料理と酒類のマリアージュ以外の新しい可能性を見出せるはずです。それとは別ルートではありますが、店主は日頃の試飲会などで思いがけない発見(serendipity)をすることがあります。対象のワインにあれこれと食べ物を組み合わせ試して(楽しんで)います。これには、ヒトが持つ記憶を含めた官能(sensory)に負うところが大きいでしょう。そこで、最近の実例を2種紹介します。どちらもポルトガルから。



 赤はヴィーニョヴェルデの赤。ヴィーニョヴェルデは軽い微発泡白ワインのイメージが強いでしょうけれど、少ないながらロゼも赤もあります。イノワインの発見は黒ブドウのヴィニャオンの赤(生産者:モンジェス)。アシスタント犬飼のお墨付きです。このブドウは果肉まで赤いタントュルイ系のブドウで、強い紫色のワインとなります(シャツ等のシミにご注意ください)。ややヤマブドウ的な野性味も感じられ、ブドウの味が引き締まった辛口です。ポルトガルではイワシの内蔵に合わせるようです。私なら、埼玉県秩父のイノシシの鍋や豚肉の味噌漬け、鰻の蒲焼、魚の照り焼き、胡麻ドレッシングのサラダなどの組み合わせをお薦め。このワインは冷やしてお飲みください。生姜を効かせたポークジンジャーはとても美味しかったです。

 白はミーニョ地方のフェルナン・ピーレス種のワインで以前からイノワインでご好評いただいていました。今回新ヴィンテージの2018が入荷しましたが、味わいが大きく変わりました。今までは白い花の香りのフレッシュな味わいのワインでしたが、2018はやや落ち着いたメロンの香り。やさしい甘味を感じ、酸は穏やか。日本酒の吟醸香に近い感じです。ゆでたタコの青じそドレッシング、冷奴、白身魚の昆布締め等、日本酒の冷やの場面でこのワインを合わせて違和感はありません。

 この2種、今イノワインで販売しております。暑くなる季節ですが、日本酒の冷やの感覚で楽しむのはいかがでしょうか?

イノワイン店主 井上直巳



未成年者(20歳未満)の飲酒は法律で禁じられています。